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室町時代から続く俵山温泉の白猿伝説

山口県長門市の俵山温泉地区には、白猿伝説が伝えられています。

白猿伝説

時は平安時代、延喜16年

ひとりの猟師が俵山の森で白猿を見つけ、矢を放った。

矢は命中したが、急所を外れ、白猿は逃げてしまったのであった。

白猿伝説

後日、猟師は、その時の白猿が泉の水で傷口を癒しているところを見つけた。

そして、白猿を生け捕りしようと、そっと近づいたのである。

白猿伝説

すると、そのとたんに白猿は光を放って仏体となり、紫雲に乗って去っていったのである。

猟師はこれに驚き、白猿が傷を癒していた泉の水を手ですくってみると、その水は温かく湯気が出ていたのだった。

猟師は、あわてて付近の能満寺に駆け込んで事情を伝えると、寺の住職はこのように話した。

「この寺を創建した弘法大師空海の誓いにより、薬師如来が白猿に化けていたのだ。

世の中の病者のため万病に効く霊泉を示し、また殺生を生業とする者に慈悲恩愛の道理を教えるために、それは現れたのである。

おまえは、今日から猟師をやめて山を開き、世の病者を救えば、これまでの罪が償われるであろう。」


白猿伝説

この話を聞いた猟師は感嘆し、村人を集め、草木を刈り、泉源の岩石を開き、浴場を整備したのであった。

これが、俵山温泉の始まりとなった物語である。

『俵山温泉誌』より

(制作: やしろたかひろ)