エコビレッジ

山口県長門市】俵山ビレッジ

俵山ビレッジ

健康をテーマにした湯治場コミュニティ

山口県長門市の山間部にある俵山地区は、室町時代から続く古い歴史のある湯治場です。この地には白猿伝説が語り継がれています。
俵山ビレッジは、青年事業家・吉武大輔さんが発起人となり俵山温泉街に誕生しました。
この地区の空き家や空き旅館を活用し、DIYで建物や施設を再生する取り組みを進めています。
その一例として、灯炬庵は、2020年12月に最初の拠点として開設されたシェアハウスです。その名称には「闇の中でも消えることのない光」という意味が込められています。

俵山ビレッジは、俵山温泉観光組合と連係して、地元の街起こし活動に積極的に参加している全国でもユニークなコミュニティです。
俵山温泉は、「西の横綱」と称されるほど効能が高く、源泉掛け流しの温泉です。かつては湯治場として栄えましたが、時代と共に湯治文化が衰退し、旅館の廃業も進んでいました。俵山ビレッジは、この歴史ある温泉地を現代に蘇らせ、新たな価値を付加することを目指しています。

【レポート】点在する古民家を再生し街の再活性化に挑む

俵山温泉

温泉街に静かに流れる木屋川(こやがわ)。レトロな雰囲気の古い街並みに溶け込んでいます。

俵山温泉地区は、10分も歩けば一巡することが出来るほどのこじんまりとした集落でもあるのですが、住民の人口が減少し高齢化が進んでいます。この地区の特性に着目して狭いエリアの中で点在していた古民家や空き旅館をリノベーションし、そこに全国から若者たちが移住してきて形成されたコミュニティが俵山ビレッジです。

リノベーションハウスの中で「灯炬庵(とうこあん)」は、現在の中心的なコミュニティスペースになっており、ビジターはここでメンバーと一緒に食事をとることができます。

「meguri」は、体と心の健康をテーマにしており、ミストサウナが設置されています。
建築士の方が綺麗にしてくださった元旅館を買い取った施設で、今後は俵山ビレッジの総本山として発展していきそうな施設です。
現在は一般向けに一棟貸し(日貸し)もしているということで、会社の研修所や保養所としても使えそうです。

「Entrance」は、旅館のオーナーさんのご自宅を買い取って改装した施設で、カフェ&バー(1F)とラウンジ(2F)があり、一部はゲストルームになっています。俵山郵便局のそばにあります。

俵山温泉

(画像をクリックすると拡大します)

今後は動物たちを飼うエリアや味噌蔵、キャンプ場、駄菓子屋の運営なども予定されています。
さらに、これからの社会にとって子育てが大切なテーマになるという観点から、子供たちが俵山に集まって楽しい体験をして帰ることの出来る場づくりも計画中とのこと。

俵山バス停のすぐそばにあるスナック「寿楽」は、コミュニティメンバーの三ッ木あずきさんがチーママをやっています。
宮崎出身でまだ20代前半の彼女ですが、すでに俵山ビレッジの顔的な存在。この温泉街のまち起こし活動には精力的に参加されていて、俵山女歌舞伎も踊るそうです。

メンバーはそれぞれの個性や得意分野や価値観を活かしてコミュニティ内の仕事を役割分担したり、地域のボランティア活動に参加したり、自分でビジネスを始めたりと、共有の目的を共有しつつ、最低限の約束さえ守れば自由度の高いDAO(自律分散型組織)が形成されています。

この地の温泉の泉質は、「奇跡の水」と謳われているあのルルドの水で有名な水素水と言われています。
氏神様は熊野神社です。有史以前からの自然信仰の聖地であった熊野(紀伊国牟婁郡)に成立し古くは物部氏が守ってきた神社です。

俵山に滞在中、私はなぜかあまりお腹がすかなくなり、帰りに東京の人混みの中に入ったとたんに空腹を感じるという体験をしました。やはり、その土地のエネルギーが人の身体に影響するということがあるのでしょう。

吉武さんの計画は俵山という場所で完結するものではなく、日本全国に循環型ライフスタイルを広める雛形づくりプロジェクトとしてスタートしており、やがてこのプロジェクトからコミュニティ活動の全国ネットワークが構築されていくことでしょう。

(2024.5.15/やしろたかひろ)

概要

【俵山ビレッジ】俵山温泉で自分らしく生きる 〜めい・伊東美佳・町田美由紀の俵山物語〜