価値が減少する地域通貨

『この世のすべてのものは、時間とともに老化して、価値が下がっていく。
なのに「お金」だけが、なぜ、時間が経っても価値が減らず、そればかりか「利子」までついて価値が増えていくのだろうか。』

これは、ドイツの作家、ミヒャエル・エンデが抱いた疑問でした。日本では「エンデの遺言」という書物が有名です。
エンデの思想は、経済学者シルビオ・ゲゼルの「自由貨幣論」に強く影響を受けています。

ドルや円といった法定通貨の問題点は、物やサービスの交換手段という本来の目的から外れて、お金を保有すること自体が人々の目的になり、貯蓄やマネーゲームに使用されて流通が滞ってしまうということです。
お金の流通の滞りが、不況と呼ばれる現象を生み出し、さらに、貧富の差を生み出しました。

1932年、オーストリアのヴェルグルという町で、ある実験が行われました。
ゲゼルのアイデアを基に「労働証明書」という名称の地域通貨を発行。町はこの通貨を労働者の賃金として発行したのです。

この通貨を保有する者は、毎月1%の税金を払う義務を課されました。すなわちマイナス金利。タンス預金でも1か月以上保有すると価値が減っていく通貨です。
貯蓄を避け、速やかに消費・支払いが促されたことで、通貨の流通速度が高まり、町の経済は活性化されたのです。
この実験は大成功を収めましたが、それは中央銀行の通貨発行独占権を脅かすものであったため、オーストリア中央銀行の介入によりわずか13ヶ月間で強制的に終了させられたのでした。

このところ日本国内のいくつかのコミュニティで話題になっているものとして、「腐る通貨」と呼ばれている使用期限付きのコミュニティ通貨があります。
それは、ゲゼルのアイデアが元になっているものと思われます。
しかし、ヴェルグルで発行された地域通貨とは、運営方法も用途も全く違います。
用途が極端に限定されているコミュニティ通貨に使用期限を設けることについては、私は疑問を感じています。